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[転載]北方四島の国後島、色丹島の遺跡から収集した石器から、カムチャツカ半島の黒曜石原産地の黒曜石は、国後島、色丹島では確認できず、黒曜石の人的な移動はなかったと考えられる。

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標津町のすぐ前は国後島です


千島列島における人類活動史の考古学的総合研究
3 北方四島とカムチャツカ半島の黒曜石分析


 北海道、千島列島、カムチャツカ半島の地域で確認されている黒曜石原産地は、北海道で白滝、赤井川などの12カ所、カムチャツカ半島で数カ所あり、千島列島では今のところ確認されていない。したがって、ここでは遺跡から出土した黒曜石の原産地を推定する。
 この原産地推定の目的は、先史時代の旧石器文化、縄文文化、続縄文文化、オホーツク文化、擦文文化をつうじ、黒曜石の流通がどのように行われてきたかを明らかにし、時期ごとに遺跡で展開されていた人的な交流や交易などを人類活動史の一つのデータとすることである。
 また、カムチャツカ半島の黒曜石原産地データがないため、その原産地データを収集し明らかにする目的もある。
  ここでは、これまで千島列島~カムチャツカ半島の遺跡から収集した黒曜石製の石器類の黒曜石原産地、民族資料として収集した石器と、新たにカムチャツカ半島の黒曜石原産地で採集してきた原石データについて、エネルギー分散型蛍光X線分析装置で元素分析を行い、原産地推定とカムチャツカ半島の原産地を検討した。
  また、分析データについては、定量的な蓄積が必要であるが、表3に示した分析試料点数は計11点で、カムチャツカ半島の遺跡1カ所2点と民族資料1点、国後島の遺跡2カ所2点、色丹島の遺跡4カ所4点、さらにカムチャツカ半島の黒曜石原産地で採集した資料2カ所2点である。
  また、カムチャツカ半島における黒曜石原産地の基礎データは無く、今回の分析データは基礎的なデータの一つとなるものである。

(1)分析試料と採集・収集の遺跡と原産地
分析試料の採集・収集地域は、カムチャツカ半島、国
後島、色丹島の遺跡や黒曜石原産地のものである。表3
に示すとおり、カムチャツカ半島ではアヴァチャ多重層
遺跡から収集した2点(表3-1・2)、エッソで収集した
民族資料1点(表3-9)、ペトロパブロフスク・カムチャ
ツキーと産地不明ではあるが原産地で採集した2点(表
3-10・11)、国後島では古釜布砂丘遺跡1点、古釜布沼
南岸遺跡1点、色丹島ではマタコタン2遺跡1点、マタコ
タン3遺跡1点、チボイ1遺跡1点、チボイ3遺跡1点である。

① アヴァチャ多重層遺跡の試料は、2000年(平成
12)9月28日にカムチャツカ半島の遺跡調査をした時に
収集した資料である(写真8-1・2)。アヴァチャ多重層
遺跡は、ペトロパブロフスク・カムチャツキーの北東郊
外約10km、アヴァチャ川の多数ある河口の最北に位置
し、新石器時代から歴史時代の時期の三つの文化層が確
認された集落である。杉浦(2000)にこの遺跡の報告
があり、ヂコヴァ, T. M.が1985年に調査したものであ
る。この遺跡からは、2点のフレークを分析した。分析
した試料は、表3-1(縦1.8×横2.2×厚さ0.3cm)がやや
透明な黒曜石、表3-2(縦1.8×横0.9×厚さ0.3cm)が透
明度をもたない黒曜石である。

② エッソ村(ブイストル地区)の試料は、2000年
(平成12)9月26日に、先の目的と同様に調査を行った
時に収集した民族資料で、エベン民族が使用していた黒
曜石製のスクレーパー1点である(写真8-9)。この資料
は、柄に装着し皮なめし(トナカイの皮)として現役で
使用していたものを収集したものである。現在では、一
般的に鉄製のスクレーパーが使用されている。この試料
は表3-9(縦5.4×横5.2×厚さ3.3cm)で透明度がなく、
ブルーグレー色の黒曜石である。この黒曜石は、エッソ
に原産地があり特徴的なものである。

③ 古釜布砂丘遺跡の試料は、2008年(平成20)8月2
日に調査を行った時に収集した資料である(右代・鈴木
ほか 2010、写真8-3)。この収集した石器(フレーク)
1点は、続縄文文化の後北C2・D式土器とともに収集し
たものである。この試料は表3-3(縦1.8×横1.5×厚さ
0.4cm)で透明度がない黒曜石である。

④ 古釜布沼南岸遺跡の試料は、2010年(平成20)5
月29日に調査を行った時に収集した資料である(右代・
鈴木ほか 2011、写真8-4)。収集した石器(フレーク)
1点は、縄文文化から続縄文文化の時期と考えられるも
のであり、明確な時期は特定できない。この試料は表
3-4(縦2.5×横2.3×厚さ0.6cm)でやや透明な黒曜石で
ある。

⑤ マタコタン2遺跡の試料は、2012年(平成24)9月
11日に調査を行った時に収集した資料である(右代・鈴
木ほか 2013、写真8-5)。収集した石器(フレーク)1
点は、続縄文文化の土器とともに収集したものである。
続縄文文化の土器は型式までは特定できなかったが、縄
文の原体からそれを判断した。この試料は表3-5(縦1.9×
横1.7×厚さ0.3cm)で濃いグレー色の黒曜石である。

⑥ マタコタン3遺跡の試料は、2012年(平成12)9月
11日に調査を行った時に収集した資料である(右代・鈴
木ほか 2013、写真8-6)。収集した石器(フレーク)1
点は、縄文文化から続縄文文化の時期と考えられるもの
であり、明確な時期は特定できない。この試料は表3-6
(縦2.4×横2.1×厚さ0.9cm)で透明度のない円礫面をも
つ黒曜石である。

⑦ チボイ1遺跡の試料は、2012年(平成12)9月15
日に調査を行った時に収集した資料である(右代・鈴木
ほか 2013、写真8-7)。収集した石器(フレーク)1点
は、縄文文化の前期前半の温根沼式土器とともに収集し
たものである。この試料は表3-7(縦1.3×横0.8×厚さ
0.2cm)で透明度をもつ黒曜石である。

⑧ チボイ3遺跡の試料は、2012年(平成12)9月15
日に調査を行った時に収集した資料である(右代・鈴木
ほか 2013、写真8-8)。収集した石器(フレーク)1点
は、続縄文文化の土器とともに収集したものである。続
縄文文化の土器は型式までは特定できなかったが、縄文
の原体からそれを判断した。この試料は表3-8(縦1.3×横
1.1×厚さ0.2cm)で透明度をもつ黒曜石である。

⑨ ペトロパブロフスク・カムチャツキーの試料は、
2000年(平成12)9月30日に、カムチャツカ調査を行っ
た時に採集した黒曜石の円礫片1点である(写真8-10)。
この試料は表3-10(縦4.1×横3.3×厚さ1.3cm)でやや
透明度があり、細かな球顆状構造がみられる黒曜石であ
る。この黒曜石は、ペトロパブロフスク・カムチャツ
キー市街のアヴァチャ湾北東岸で採集した円礫片であり、
内陸に原産地がある。

⑩ カムチャツカ産の試料は、プタシンスキー,A.V.氏
(カムチャツカ国立大学)が採集した黒曜石を2014年
(平成26)に寄贈を受けたものである(写真8-11)。こ
の試料は表3-11(縦6.7×横7.2×厚さ3.5cm)で部分的
に透明であるが、ほとんどが黒色の黒曜石である。この
黒曜石は、カムチャツカ産ではあるが、原産地を特定で




(3)原産地推定の分析結果

表4に試料の測定値および算出した指標値を示し、図
4の黒曜石原石判別図に、分析した試料の指標値をプ
ロットして示した。図は視覚的にわかりやすくするため、
各判別群を楕円で取り囲んで示した。

分析の結果、カムチャツカ半島の試料3点は、いずれ
も異なる位置にプロットされ、別々の判別群と考えられ
る。ここでは、仮に表3-9をエッソ群、表3-10をアヴァ
チャ湾北東岸群、表3-11を産地不明群とした。また、
表3-1・2のアヴァチャ多重層遺跡採集の2点は、先の
3ヶ所の原石群とは一致しなかったが、同遺跡の2点の
分析値は互いに近い位置にプロットされており、同一判
別群と考えられる。ここでは、仮にアヴァチャ多重層遺
跡とした。国後島、色丹島採集の石器6点は、1点が白
滝1群(白滝エリア)、1点が白滝2群(白滝エリア)、4
点が所山群(置戸エリア)の範囲にプロットされた。

図4には、判別図法により推定された判別群名とエリ
ア名を示した。カムチャツカ半島の黒曜石製石器および
原石は、5点を分析した結果、四つの判別群に分かれて
おり、未知の産地が多く存在することが予想される。

すなわち、この分析結果から北方四島の国後島、色丹島の遺跡から収集した石器は、

①白滝エリア産、置戸エリア産の黒曜石が使用されており勇別川中流域と常呂川上流域の産地のものであることが推定できた。

②このことから、白滝、置戸産の黒曜石原石が湧別川、常呂川の流域、オホーツク海沿岸域あるいは内陸をつうじ、国後島と色丹島に人的な移動でもち込まれたことが明らかとなった。

③今のところ、カムチャツカ半島の黒曜石原産地の黒曜石は、国後島、色丹島では確認できず、黒曜石の人的な移動はなかったと考えられる。

また、この分析結果は、数的にも時期的にも、また遺
跡の数についても限られたデータであり、今後定量的な
分析データが求められることは当然である。ここでは、
あくまでも現在の分析データでの判断である。今後より
多くの分析を行い基礎データの収集を行い検討していく
ものである。


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北方領土の唄




転載元: 北海道にまた行きたいな


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