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[転載]土壌環境・地盤環境の環境影響評価と住友金属鉱山の日向精錬所と日向市西川内地区の不法投棄

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大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(III)<環境保全措置・評価・事後調査の進め方>(平成14年10月)


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第3章 土壌環境・地盤環境の環境影響評価・環境保全措置・評価・事後調査の進め方

1 総論
 土壌は地殻の最表層生成物であり、地表の岩石(母岩)等がその場の気候、生物、地形、人為と経過した時間(年代)の相互作用のなかで、一定の形態と機能を獲得した自然物である。岩石の風化物は土壌の母材であるが、母材に生物-気候要素が作用すると土壌ができる。森林などにおける土壌層位は、有機物層のA0層と土壌作用に応じてA、B、C層に区分され、母岩(基盤)はR層と表記される。ただし、一般に造成工事などの改変を受けた土地および大雨による土砂流出が起きた土地等ではこのような土壌層位は認められない。
地盤は建設や防災等で対象とする人類の生活基盤・活動範囲として関係する地層部分を指し、各種構造物を支える土台としての地面および地下のある範囲をいう。地盤は、狭義には自然地盤の中の未固結地盤(土砂地盤、土質地盤)を指し、広義には自然地盤の固結地盤(岩石地盤、岩盤)や人工地盤を含めて呼称することがある。

 地質は、ある地域の土地を構成する岩石・地層の種類、重なり方の順序、空間的な配置のしかた、現在の状態にいたるまでの歴史などを包括的に示す語である。
 土壌、地盤、地質は、それぞれ明確に分けられるものではなく、図3-1-1に示すように、その扱いには共通する部分と区別すべき部分がある。
 土壌と地盤は、本来、多面的な機能(荷重支持機能、保水機能、通気機能、浄化機能、養分の貯蔵機能など)とそれに基づく様々な役割(生活・社会基盤施設を整備する場、多様な生物が生存する場、地下水を涵養する場、食料等を生産する場、廃棄物を受け入れる場など)を有しており、次世代に引き継がねばならない人類の貴重な財産である。

 本検討においては、「土壌環境」では、土壌層位が認められない人工改変地等も含めて対象とする。「地盤環境」では、人工地盤も含めて対象とする。なお、重要な地質は、別途「地形・地質」(「自然環境のアセスメント技術(III)」(環境省総合環境政策局、2001))で扱っている。
図3-1-1 土壌、地盤、地質の関わり
1-1 土壌環境の環境影響評価の進め方

1)土壌環境の環境影響評価の基本的な考え方


(1)土壌環境の特徴

 土壌は地殻の最表層生成物であるが、それは、物質循環、特に水循環やエネルギーフローに関与し、降水の流動や貯留、地下水の涵養、生態系の維持などに重要な役割を果たしている。

 土壌は、自然環境を保全する上でも重要な役割を持っている。物理的には生物の生息・生育基盤として必要な通気性や保水性を維持 し、 化学的には生物の生存に不可欠な有機物や有効成分を保持し、また、土中の土壌動物、バクテリア、菌類はその生物活動のなかで有機物の分解に深く関与している。土壌の持つこのような機能は、生物にかけがえのない生息・生育基盤を提供している。

 したがって、環境影響評価を進めるにあたっては、土壌が「環境」の基盤をなしていることや、その機能が多様でかつ相互に関与しつつ成り立っていることなどを考慮に入れておくことが重要である。

 実際の土壌環境の環境影響評価においては、物理的、化学的及び生物的な要素に係る機能として、「保水通水機能」「生態系の構成要素としての機能」「生産機能」「物質収容機能」などが代表的なものとして取り扱われることが多いので、留意が必要である。また、土壌にはレッドデータに類するような学術的・希少性の見知から評価すべきものがあり、これらの土壌の保全についても環境影響評価では考慮される必要がある。


【留意事項】環境影響評価を行うにあたっての留意事項
 土壌の有する各機能は、従属するミクロ的要素である土性や三相分布、保水性、土壌の構成等の集合体としての結果である。このため、単一のミクロ的要素にのみ焦点をあてた環境影響評価を行うことは、全体あるいは各機能としての評価に結びつかない恐れがあることに留意が必要である。
 土壌汚染は、有害物質を含む原材料や溶剤などを保管した場所、使用した場所、廃棄物を処理した場所、及びばい煙等に含まれている汚染物質が降下した範囲など、汚染物質の移動経路に沿って発生する。したがって、これらの発生源や移動経路における汚染物質の環境中への負荷を回避・低減することにより、事業実施による新たな土壌汚染の発生を未然に防止することができる。
 その他、鉱脈や地層特性に起因する自然由来の土壌汚染や、温泉開発等の施工により周辺環境に新たな環境負荷を及ぼす場合があることに留意が必要である。

 土壌汚染が発生することによる周辺環境への影響は、人の健康への影響だけでなく、生活環境への影響、生態系への影響など多様である。また、土壌汚染対策を行なうことによる土壌環境の変化が、周辺環境の土壌機能などに影響を及ぼす可能性もある。したがって、周辺の土地利用や水系等の地域特性や事業特性を十分に踏まえた環境影響評価が必要である。
 環境影響評価の対象となる開発事業においては、切土、盛土、埋立などによる土地の改変行為や地下水環境の変化などにより土壌の持つ機能や構造が変化する。したがって、土壌環境の環境影響評価は、生産活動や自然由来による土壌汚染と地下水環境や多様な生態系の保全などに関係する土壌機能の側面から捉えることが必要である。



図3-1-2 土壌環境と生態系の関わり
A層:土壌の最上部で、有機物の集積によって生成され、腐植にとみ、植物が直接生活する土層である。
B層:A、C層の中間で、C層よりも風化が進み、A層からの酸化物が集積する層である。
C層:母岩の風化したもので、A、B層のベースとなる。土壌生成を受けていないため、土壌の母材とされる。
R層:風化されていない岩石の組織を残した、固い部分の母岩層である。







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(2)調査・予測・評価のあり方

 土壌環境への影響は、土壌機能の劣化という形で現れる。土壌機能の劣化は、例えば土壌の質的な劣化をもたらす土壌汚染や土壌構造の撹乱という視点からとらえることができる。
 地表面の改変などの行為や施設の存在などの土壌機能に影響を与える「影響要因」は、事業特性を踏まえて想定する必要がある。そして、これらの影響要因が、土壌機能の他、地域の水環境や生態系などの環境に与える影響も考慮して環境影響評価の対象とする環境要素を検討する。
 その際、影響要因及びそこから派生する影響については、事業による影響の時間的変化や長期における累積的な影響などの時間的な側面を捉えていくことが重要である。
 従来から利用されている環境要素-影響要因マトリクスによる項目の整理、項目間の関連等の検討に加え、検討漏れを防止する観点等からはインパクトフロー図を利用して検討することも有効である。インパクトフロー図により、事業が土壌機能や他の環境要素にどのような過程を経て影響を与えるか、また、相互に関係を持っている影響要因と環境要素との伝播経路を示すことができるからである。
 なお、主務省令では標準的な影響要因が示されているが、これを参考にしつつも、これにこだわらず土壌環境を構成する環境要素に対する影響を捉える観点から、幅広く抽出することが必要である。また、効率的でメリハリの効いた調査項目等の設定をするために、環境要素・影響要因の抽出において、「重点化」「簡略化」を意図して項目の追加と削除を適宜実施することも重要である。
表3-1-1 影響要因と環境要素の変化とマトリクスの例
注)表中○印は、影響を受ける可能性があることを示す。


【留意事項】土壌構造の撹乱について
 土壌は、図3-1-2にあるような断面形態等の撹乱により劣化する。撹乱は、[1]土壌が消失する場合、[2]断面構造等が乱される場合、[3]構造は存在するが被覆等が行われる場合等に大別される。水循環や植生等の着目する項目により、取り扱う際の考え方が異なることに留意が必要である。
図3-1-3 インパクトフロー図の例

 土壌汚染による環境影響の回避・低減のためには、汚染状況によっては、単に、環境基準達成の有無を調査するだけではなく、汚染物質の移動・拡散経路や汚染物質の暴露経路について検討の上、周辺環境等への影響を予測・評価することが必要となるケースもある。また、人の健康への影響を第一義的に対象とすることが重要であるが、周辺の環境条件によっては、生活環境への影響、さらには生物の生息・生育等への影響も対象とすることが必要な場合もある。なお、土壌汚染による環境影響の回避・低減のための取組みが、他の環境要素に対する新たな環境影響の原因となる可能性もあることに留意した評価が必要である。

 以上のことを考慮し、土壌の質的な劣化をもたらす土壌汚染の環境影響評価にあたっては、次の事項に留意が必要である。

・対象地における土壌汚染のとらえ方

・土壌汚染の実態

・事業実施前における周辺環境への影響

・事業実施(施工・土壌汚染対策工事)による環境リスクの発生

・事業活動による新たな土壌汚染の発生及び周辺環境への影響

 なお、土壌汚染は大気汚染や河川・海域等の水質汚濁とは異なり、残留性・蓄積性の高い汚染であるという特徴を持っているため、事業実施前に発生していた土壌汚染が、事業実施時点で顕在化することが多い。そのため、事業実施前の土壌汚染の状況については、スコーピングにおける既存資料調査による把握が困難な場合も多い。従って、地域特性の調査段階で十分な現地調査を行うことや環境影響評価実施段階におけるフィードバック、項目・手法の見直し、目的や視点の修正についても、留意することが重要である。

 また、土壌汚染対策法等の法令の整備が進められていることから、特に土壌汚染に起因する直接摂取および地下水溶出による環境への影響に配慮した調査・検討が必要である。









【留意事項】
事業実施区域における土壌汚染のとらえ方について

一般に土壌汚染とは、環境基準等に定められた有害物質が基準値を超過して土壌中に存在することをいい、原因としては人為的要因による場合と自然的要因の場合とがある。
しかしながら環境影響評価の観点においては、周辺の土地利用、水系等の地域特性や建設発生土の外部への搬出の可能性など事業特性を踏まえた土壌汚染のとらえ方が必要となる。
事業実施区域の土壌汚染の実態

環境基準等に照らし合わせた土壌汚染状況の把握が基本となるが、事業実施区域の特性を踏まえた実態を把握することが必要となる。
また、環境影響の低減を図るためには、特に汚染源の位置、汚染物質の地中への浸透・移流および拡散のメカニズムを把握することが重要である。
事業実施前における周辺環境への影響

事業計画以前の人為的要因によって発生した土壌汚染の周辺環境への影響について把握する。その際、事業実施区域の土壌汚染の状況を踏まえて、影響を受ける対象(人の健康、生活環境、生物の生息・生育等)の特定と対象までの移動経路及び影響の程度について調査、検討する。
また、この検討結果に基づいて、何らかの環境保全対策が必要であるかどうか、必要な場合にはどのような方法があるかを検討する必要がある。
事業実施(施工・土壌汚染対策工事)による環境影響の発生

事業実施時に汚染物質が移動する可能性や新たな土壌汚染の発生、土壌汚染対策工事による環境への影響の可能性について評価する必要がある。

<汚染物質が移動する例>
[1]掘削工事や解体工事に伴う汚染土壌の運搬や、大気中への飛散によって汚染物質が周辺環境に移動する。
[2]浄化対策工事中の排気や排水によって汚染物質が周辺環境へ移動する。
[3]不適切な汚染土壌の場外への搬出により汚染物質が周辺環境へ移動する。

<新たな土壌汚染が発生する例>
[1]埋立や盛土として搬入した土壌が汚染されており、新たな土壌汚染が発生する。
[2]事業現場内の有害物質が封入されている施設の破壊により、土壌汚染が発生する。
[3]薬液注入等で使用する薬剤の不適切な取り扱いにより、土壌汚染が発生する。
<土壌汚染対策工事により新たな環境影響が発生する例>
[1]土壌の入れ替えにより、従前の土壌が有していた機能が損ねられる。
[2]遮水構造の施工等により、帯水層の遮断等、地下水環境への影響が発生する。
[3]土壌改良による土壌の物理性や間隙水の水質の変化により、生態系への影響が発生する。
事業活動による新たな土壌汚染の発生及び周辺環境への影響

事業内容に応じて、新たな土壌汚染の発生の可能性について評価する必要がある。

<新たな土壌汚染が発生する例>
[1]排水経路やピット、タンクからの漏洩により、土壌汚染が発生する。
[2]廃棄物浸出液の地下浸透により、土壌汚染が発生する。
[3]排ガス、ばいじん等の降下により、土壌汚染が発生する。
[4]配管・タンク等の破損や火災、輸送時の事故等により、土壌汚染が発生する。
(3)土壌環境と他の環境影響評価項目との関係

 土壌環境の劣化は、「水循環系」の構成要素としての水環境に対する影響や、生物の生息・生育の基盤としての「生態系」への影響など、他の環境影響評価で対象とする環境要素と密接に関係する。土壌環境の調査・予測・評価は他の項目の調査・予測・評価と深く関わる場合もあることから、関係が想定される環境要素を視野に入れた検討をすることなども必要である。
 例えば、土壌汚染に対しての環境リスク低減方策が、土壌が本来有していた環境上の機能(保水・通水機能や生物の生息・生育基盤としての機能等)を損ねる可能性がある。また、土壌は高等植物から土壌動物、土壌微生物にいたる陸上生物の重要な生息・生育基盤であるため、生物多様性分野に係る環境影響評価を行う場合には、土壌機能と「生態系」との相互関係に配慮した検討が必要となる。

【留意事項】関連が想定される環境要素の例
[1]
「土壌機能」⇔「水循環」


土壌の保水・通水機能と水循環は相互に密接な関係を有しており、水循環の状態を規定する要因となることに留意が必要である。例えば、不圧地下水を貯留する帯水層の下部に分布する難透水性の古土壌は、水循環に関わっているなど。

[2]
「土壌機能」⇔「生態系」


生態系は生物の生息・生育環境ならびに生物相互の関係を通じて多様な機能を有するが、特に土壌の調査・予測・評価においては、高等植物の生産機能、土壌動物、土壌微生物の生物分解機能、土壌吸着等の浄化機能等の環境保全機能に着目する必要がある。

[3]
「土壌汚染」⇔「地下水」


土壌汚染は地下水汚染の原因となるおそれがある。地下水汚染があると溶出した汚染物質が地下水の移流等によって周辺環境へ移動するおそれがある。従って、土壌汚染の調査・予測・評価は地下水汚染の調査・予測・評価と深く関わる場合もある。


[4]
「土壌汚染」⇔「大気」


汚染物質を含む土壌の飛散は、局所的な汚染の原因となるおそれがある。また、揮発性物質や悪臭成分を含む汚染土壌が施工等により露出した場合には、これらの成分が周辺に移動し、人の健康への影響及び生活環境への影響(悪臭)を及ぼすおそれがある。

[5]
「土壌汚染」⇔「表流水」


汚染された土壌中に含まれた汚染物質の降雨浸透に伴う溶出・移流による直接流出、汚染物質を含む土粒子の流出などによる表流水の汚染のおそれがある。また、油による汚染土壌と接した水域に油膜が発生するなどの生活環境への影響のおそれもある。

[6]
「土壌汚染」⇔「土壌機能」


土壌汚染による環境保全対策としての覆土、舗装や土の入れ替えによって、降雨の浸透等の条件が代わることにより保水機能や通水機能が損なわれるおそれがある。また、遮水壁など、汚染土壌・地下水封じ込め施設の施工により、帯水層が遮断されるなど地下水環境への影響が発生するおそれもある。

[7]
「土壌汚染」⇔「生態系」

生態系は生物の生息・生育環境並びに生物相互の関係を通じて多様な機能を有するが、土壌汚染の環境保全対策により、土壌水等の物理性や間隙水の水質等が変化することにより、生態系が乱されてしまうおそれがある。


(4)調査・予測・評価の「重点化」「簡略化」

 土壌環境は種々の要素が互いに影響を及ぼしつつ成り立っていることから、調査・予測・評価の項目・手法を選定するにあたっては、広い視点に立って検討していくことが必要である。検討に当たっては、事業特性、地域特性を十分考慮して、必要に応じて重点化、簡略化を行うことが重要である。
 重点化、簡略化の検討にあたっては、環境影響の程度、環境影響を受けやすい地域または対象の有無、および既に環境が著しく悪化している地域の存在の有無等を考慮する。この際、どのような理由により重点化、簡略化したかを検討の経緯を含め整理しておくことが重要である。

2)土壌環境の環境影響評価の手法

(1)地域特性把握の調査

 地域特性把握のための調査は、対象地域の環境特性を把握し、適切な環境影響評価のための調査・予測・評価の項目と手法を決定するための基礎資料を整理するものである。
 特に現地踏査とヒアリングは環境影響評価や土壌調査に十分な経験を有する技術者が担当し、既存資料調査で把握した情報の確認・修正や、既存資料からは把握することができなかった地域情報の補完を行う必要がある。
 土壌汚染に関する調査は、基本的に土地利用や操業活動の履歴等について既存資料の収集整理及び現地踏査により行う。一方、土壌機能に関する調査は、直接的に事業を行う範囲にこだわらず、例えば水循環系の構成要素である地形・地質や陸域生態系の基盤としての土壌として考えた場合の影響範囲という視点で地域特性を調査することも重要である。


【留意事項】地域特性把握の調査項目(例)

<自然的状況>

周辺の水文地質(地形、地質、水文地質、地下水流動)
水系の分布
土壌の状況
植生の状況


<社会的状況>
過去の土地利用(登記簿、過去の地形図、過去の航空写真)
操業活動の履歴(汚染物質の使用状況、汚染物質の保管・運搬状況、排水・廃棄物の発生・処理状況、施設の破損や事故の履歴)造成の履歴(切土、盛土、埋立の記録)
地下水利用(井戸の有無及び位置、地下水質)
周辺の土地利用(過去、現在における敷地外の事業活動に関する情報 [業種、排気塔の位置等])
法令・基準の状況(土壌汚染等に係る各種の法令・基準、自治体等による条例・要綱等の規制)

(2)環境影響評価項目の選定

 環境影響評価項目は、事業特性から抽出された影響要因と、事業実施区域及びその周辺の地域特性から抽出された環境要素との関連に基づき設定する。
 土壌環境についての環境影響評価項目を選定する場合には、直接的な土壌の喪失、解体工事、施設建設工事及び供用後の汚染物質の使用や廃棄等が原因となって発生するものの他、事業を行うことによる地表面被覆形態の変化や地下水流の分断に起因したものや、生態系への影響が想定されるもの等にも着目することが必要である。
 土壌機能に関する環境要素は、「土壌の保水通水機能」や「物質収容機能」の保全を考慮して、土の保水性、土性や養分保持力等の物理的・化学的な変化に関連する項目を選定する。

 土壌汚染に関する環境要素は、主に法令等により基準の設けられている有害物質が対象となるが、新たに有害物質として認知されるようになった物質や、法令等の規制対象外の物質であっても生活環境に影響を与える物質(悪臭物質、油等)や住民等の関心の高い物質等については留意が必要である。
 なお、主務省令で定められた環境影響評価項目は、対象となる事業毎に標準的な事業内容について実施すべき項目を定めたものであり、事業特性や地域特性は個々の事業で異なることから、常に項目の追加・削除の必要が生じることに留意が必要である。

(3)土壌環境の調査

[1]調査項目の検討

 調査項目は、環境影響評価項目の選定における検討内容を踏まえ、重要と考えられた項目についてその現況を調べ、事業による影響要因が時間的・空間的にどのように環境要素に作用するかを予測・評価できるように選定することになる。従って、この段階において事後調査を考慮にいれた調査項目等の検討を行うことが必要である。
 現況調査においては、地域特性把握の調査結果及び対象事業の特性から、事業実施により影響を及ぼすと想定される環境要素に係る項目の現況を詳細に把握することが必要である。さらに、対象となる環境要素以外にも、環境要素と関連性の高い項目や予測・評価において用いるパラメータの設定等において必要となる項目についても、地域特性把握調査で得られたデータが不十分な場合には調査を実施する必要がある。

 土壌汚染については、社会特性および地域特性を考慮しつつ表3-1-2に示す項目について留意し、土壌機能については、多くの環境要素と多様に関連するため、土壌機能を構成する重要な要素について着目し評価することが必要である。この際、各構成要素は互いに密接に関連していることから、単一の構成要素にとらわれることなく、対象地域の土壌機能の特徴を把握できるような項目を選定することが重要である。


【留意事項】土壌汚染に係る調査項目の例
<水文地質に関するパラメータ等>
 地質構造、帯水層区分、地下水位、地下水成分、地下水流動方向、帯水層定数等
<汚染物質に関する情報>
 汚染物質の種類、土壌・地下水中の汚染物質濃度分布等
<土壌・帯水層中の物質移動に関するパラメータ等>
 汚染物質の吸着特性、汚染物質の分解特性、透水係数、透気係数等
<土壌汚染対策に伴う周辺環境への影響予測のために必要なパラメータ等>
 粘土層の分布と土質定数(圧密特性)、土壌の不飽和浸透特性、土壌水の成分等


【留意事項】土壌機能(保水・通水機能、生産機能、物質収容機能)に係る調査項目の例

<保水・通水>
 土性、土壌硬度、三相組成、浸透能、保水力、透水性、腐植等

<物質収容>
 pH、EC、窒素、リン酸、塩基類、CEC、微量元素等

<生育機能>
 表土の厚さ、有効土層、礫含有量、土地の乾湿、肥沃度等

<生物の生息・生育>
 種数、存在数等

<土壌の構成>
 土壌の断面、土壌の層位・層厚、鉛直方向の構成、堆積腐植層厚等


表3-1-2 主な有害物質
 土壌環境基準で定められている物質 公共用水域等における要監視項目
カドミウム、全シアン、有機燐、鉛六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、銅、ジクロロメタン、四塩化炭素1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、ふっ素、ほう素、ダイオキシン類
ニッケル、モリブデン、アンチモン、クロロホルム、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロプロパン、p-ジクロロベンゼン、イソキサチオン、ダイアジノン、フェニトロチオン(MEP)、イソプロチオラン、オキシン銅(有機銅)、クロロタロニル(TPN)、プロピザミド、EPN、ジクロルボス(DDVP)、フェノブカルブ(BPMC)、イプロベンホス(IBP)、クロルニトロフェン(CNP)、フタル酸ジエチルヘキシル、トルエン、キシレン
注)土壌環境基準は、ダイオキシン類を除き環境基本法に基づく。ダイオキシン類の土壌環境基準は、ダイオキシン類特別措置法に基づく。
公共用水域等における要監視項目は、水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件及び地下水の水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行等について(平成11年2月22日環水企第58号・環水管第49号)に基づく。


[2]調査地域の設定

 土壌環境の調査地域は、直接的に事業を行う範囲とその周辺地域の他、地域特性把握の調査及び環境影響評価項目として選定した項目の影響が想定される範囲とする。
 土壌機能の場合は、事業により改変を受ける範囲のみならず、水循環における土壌機能の果たす役割は大きいことを考慮して、地下水位が変化する範囲や地形変化などにより日照条件や大気環境が変化する範囲を考慮して設定する必要がある。
 土壌汚染の場合、対象事業の特性や地域特性を踏まえた上で、影響が及ぶ可能性のある範囲を設定することとなるが、距離で一律に範囲を設定するのではなく、事業実施による地下水汚染や大気経由で汚染が拡散するおそれが考えられる範囲や生態系への影響を考慮した範囲を設定する必要がある。また、汚染土壌を事業区域外に搬出して処理する場合には、搬出先も調査地域に含むことも必要である。


[3]調査手法の考え方

 土壌機能の調査は、対象地域における土壌の分布と特性を明らかにするための調査であり、代表的な地点を選定して土壌断面調査を実施し、土壌の層位など鉛直方向の特性を把握する。土壌断面の形態的特徴や選定された土壌機能を構成する物理的・化学的な特性を把握した上で土壌分類を行うとともに、分類された各土壌単位の境界線を現地踏査により明らかにして土壌図を作成する。作成した土壌図を基本とし、必要に応じて焦点を当てた環境要素を土壌図に織り込んでいくことが基本的な調査手法となる。この際、他の「水環境」や「生態系」との整合を考慮した調査の他、近年、開発が進んでいる傾斜地等については、密接な関連を持つ「地形」についても把握することが必要である。


【留意事項】基本的な調査手法
[1]地形と土壌
岩石の風化作用や水による侵蝕作用により形成された地形は、土壌型に影響を与えていることに留意することが必要であり、特に傾斜地等の土壌型の分布は、微地形等と密接に関係している。
[2]土壌断面調査
調査地域に分布する主要な土壌を網羅するように、地形・地質及び植生等と土壌の分布との関連に留意し調査地点を設定する。調査地点に試坑を掘り、土壌断面について色、土性、土壌構造、堅さ、根の分布等について観察する。
[3]土壌の物理的・化学的特性調査
各調査地点について、その代表的な土壌を可能であれば土壌層位別に試料をサンプリングし、物理的・化学的な特性の分析を行う。
[4]土壌分類
上記[1][2]に基づき、類似の断面形態を示す土壌をグルーピングして土壌タイプの分類判定を行う。この際、わが国における土壌分類(「土地分類基本調査による統一的土壌分類、経済企画庁」「林野土壌分類、林業試験場」「農耕地土壌分類、農業技術研究所」等)に準拠して土壌分類を行う。
[5]土壌の分布状況
対象地域を踏査しながら上記で分類した各土壌タイプの分布境界線を決定し、土壌分布図を作成する。境界線の決定に際しては、地形や母岩、植生等も考慮しつつ、検土杖などを利用して行うと効果的である。この際、利用する地図の縮尺は、事業規模等などを考慮して、できる限り大縮尺のものとする。
[6]土壌動物を用いた環境診断
近年、土壌動物を利用した方法も注目されている。この方法は、重要種に注目するのではなく、環境変化に対する感受性(適応力)の差によってあらかじめ3群に区分した動物の出現状況に着目するものである。感受性の高い動物群がより多く存在すれば、自然の豊かさが大きいと判定される。(詳細は技術シートを参照のこと)
[7]植生を用いた環境診断
植生は土壌特性によっても規定される。このことから、植生を調べることにより逆に土壌の特性が大まかに推測できる。
[8]

保水性(pF)試験
保水性試験結果から、保水形態による土壌水の分類(毛管水、重力水、膨潤水、吸湿水等)が可能である。また、得られるpF値によって、土壌水分の移動状況や植物生育との関連状況が大まかに推測できる。



 土壌汚染調査は、調査によって得られたデータと事業特性や地域特性から汚染機構の解明と、汚染物質の移動経路の特定を行い、これらの結果より土壌汚染及び土壌汚染対策による環境への影響を評価することを目的とする。

 土壌汚染調査によって、土壌汚染の実態を把握し、汚染物質の移動経路を特定するには、調査対象地域の条件(既存資料の充実度、土壌汚染が発生している可能性、地域の地形・地質・地下水の特性、予想される周辺環境への影響)が様々であるため、地域特有の条件に合わせた進め方で調査を行うことが必要となる。このような極めて複雑な諸条件に合わせて客観的かつ合理的に調査を進めるためには、調査をいくつかの段階に区分し、それぞれの段階毎に目的をもった調査を実施することが重要である。





転載元: 公徳心は、みんなが力を合わせて徳を積む心がけです


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