スラップ
スラップ(英: SLAPP、strategic lawsuit against public participation、威圧訴訟、恫喝訴訟。直訳では「対公共関係戦略的法務」)は、訴訟の形態の一つ。大企業や政府などの優越者が、公の場での発言や政府・自治体などの対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者や個人に対して、恫喝・発言封じなどの威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟である。
概説
経済的に力のある団体が原告となり、対抗勢力を被告として恫喝的に行うことが多い。被告となった反対勢力は、法廷準備費用・時間的拘束等の負担を強いられるため、仮に原告が敗訴しても、主目的となるいやがらせは達成されることになる。そのため、原告よりも経済的に力の劣る個人が標的にされやすい。表現の自由を揺るがす行為として欧米を中心に問題化しており、スラップを禁じる法律を制定した自治体もある(カリフォルニア州。「反SLAPP法」に基づき、被告側が提訴をスラップであると反論して認められれば公訴は棄却され、訴訟費用の負担義務は原告側に課される[1])。
日本でも近年企業と個人ジャーナリストの間でこの形態の訴訟が見られ、この概念を浸透させる動きが見られているが、日本の用語としては定着していない。
共にデンバー大学教授のジョージ・W・プリングとペネロペ・キャナンは、成立し得る基準として以下の四要素が含まれる事を挙げている[2]。
- 提訴や告発など、政府・自治体などが権力を発動するよう働きかけること
- 働きかけが民事訴訟の形を取ること
- 巨大企業・政府・地方公共団体が原告になり、個人や民間団体を被告として提訴されること
- 公共の利益や社会的意義にかかわる重要な問題を争点としていること
スラップまたはスラップとの見方のある訴訟の例
日本
- 幸福の科学による8億円損害賠償請求訴訟
- 1996年12月、宗教法人幸福の科学の元信者が、多額の献金を強制されたとして弁護士山口広を訴訟代理人として幸福の科学への損害賠償請求訴訟を提起、山口は提訴記者会見を開くなどした。これに対して幸福の科学側は「虚偽の事実を訴えた訴訟と会見で、名誉を傷つけられた」などと主張して、1997年1月に元信者らに対し総額8億円の損害賠償請求訴訟を提起した。
- これに対し、山口は本訴の提起が不法行為に当たると主張して幸福の科学に対し800万円の損害賠償を請求した(反訴)。判決において土屋文昭裁判長(東京地裁)は「批判的言論を威嚇する目的をもって(略)請求額が到底認容されないことを認識した上で、あえて本訴を提起したものであって、このような訴え提起の目的及び態様は(略)著しく相当性を欠き、違法」と述べ、幸福の科学に対し山口弁護士に100万円を支払うよう命じた。教団が元信者と山口弁護士に賠償などを求めた訴訟については請求を棄却。二審の東京高裁は双方の控訴を棄却して一審判決を支持、最高裁は幸福の科学の上告を棄却し、幸福の科学の敗訴が確定した[8]。なお発端となった訴訟は元信者敗訴が確定していた[3]。詳しくは幸福の科学事件を参照
- 2008年11月沖縄県東村高江地区で、民家に隣接する6カ所の在日米軍北部訓練場ヘリコプター着陸場(ヘリパッド)建設に抗議した住民および反対者の座り込み運動に対し、15名について沖縄防衛局が「通行妨害禁止仮処分」を申し立てた。(うち、原告の証拠写真に居ない(座り込み自体参加していないとされる)住民の子供1名が被告に含まれていた、のち却下)2009年12月に那覇地裁で14名のうち2名、福岡高裁の控訴審で1名の通行妨害禁止処分が下された[9]。
- 週刊金曜日2011年12月16日号『最後の大物フィクサー、東電原発利権に食い込む』で東京電力の原子力発電所関連事業に関与してきた人物を採り上げた田中稔・社会新報編集次長は、当人から名誉毀損で名指し提訴され6700万円の損害賠償請求を受けた[11][12][13]。提訴した当人が2013年8月、訴えを取り下げた。
- 週刊文春2010年12月24日・2011年1月7日合併号『一人勝ち企業の光と影 独裁者柳井正とユニクロ帝国』と『ユニクロ帝国の光と影』(共に文藝春秋)に対してユニクロと親会社ファーストリテイリングが2011年6月に起こした書籍回収と億単位の損害賠償請求。請求は2013年10月に全て棄却された。2014年3月27日、東京高等裁判所は一審判決を支持し、ユニクロの控訴を棄却した。
★ SLAPPって何? ★
〝Strategic Lawsuit Against Public Participation〟の略語
頭文字を取って「スラップ」と言います
公の場で発言したり、訴訟を起こしたり、あるいは政府・自治体の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者に対して企業や政府など、比較優者が恫喝、発言封じ、場合によってはいじめることだけを目的に起こす、加罰的あるいは報復的な訴訟
つまり
「公的に声を上げたために民事訴訟を起こされること」
「公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、
苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと」
苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと」
Strategic Lawsuit Against Public Participation(直訳:市民の関与を排除するための訴訟戦術)は SLAPPという略語で有名である。
SLAPPは様々な訴因、例えば名誉毀損、誹謗中傷、業務妨害、共謀などで提訴される。
もともとこの言葉は、 1984年にこうした形態の訴訟の研究を始めた、デンバー大学のジョージ・W・プリング教授と
ペネロペ・キャナン教授が作り出した造語。当初、両教授はSLAPPの条件として次の四つの規準を挙げていた。
(原典:'SLAPPs: Getting Sued for Speaking Out ' Pring and Canan. Temple Univeristy Press。
SLAPPは様々な訴因、例えば名誉毀損、誹謗中傷、業務妨害、共謀などで提訴される。
もともとこの言葉は、 1984年にこうした形態の訴訟の研究を始めた、デンバー大学のジョージ・W・プリング教授と
ペネロペ・キャナン教授が作り出した造語。当初、両教授はSLAPPの条件として次の四つの規準を挙げていた。
(原典:'SLAPPs: Getting Sued for Speaking Out ' Pring and Canan. Temple Univeristy Press。
(Ⅰ)政府・自治体などが権力を発動するよう働きかけること=(注)裁判所への提訴や捜査機関への告発など
(Ⅱ)そうした働きかけが民事訴訟の形を取ること
(Ⅲ)政府・自治体・企業ではない個人や団体を被告として提訴されること
(Ⅳ)公共の利益や社会的意義にかかわる重要な問題を争点としていること
(Ⅱ)そうした働きかけが民事訴訟の形を取ること
(Ⅲ)政府・自治体・企業ではない個人や団体を被告として提訴されること
(Ⅳ)公共の利益や社会的意義にかかわる重要な問題を争点としていること
典型的なSLAPPでは「ターゲット」(プリング・キャナン教授の用語)にされるのは個人または市民団体、 ジャーナリストであり、
彼らが訴訟の「被告」にされる。
これらの個人や市民団体は、ただ単に憲法で保証された権利を行使する動き(デモ、ビラ配布、新聞への寄稿、記事の執筆など)をした
だけで「不法行為の疑いがある」として「ファイラー(filer)」=原告に民事訴訟を起こされる。
彼らが訴訟の「被告」にされる。
これらの個人や市民団体は、ただ単に憲法で保証された権利を行使する動き(デモ、ビラ配布、新聞への寄稿、記事の執筆など)をした
だけで「不法行為の疑いがある」として「ファイラー(filer)」=原告に民事訴訟を起こされる。
SLAPPが標的にする社会問題は多岐にわたる。
特に多いのは不動産開発や公人の行動、環境破壊や公害・汚染。
そのほか反対の強い土地利用などについて公に意見を表明した個人や市民団体が標的にされる。
消費者や労働者、女性、少数派(人種、性的マイノリティなど)の権利のために公的に働く個人や団体が狙われることも多い。
特に多いのは不動産開発や公人の行動、環境破壊や公害・汚染。
そのほか反対の強い土地利用などについて公に意見を表明した個人や市民団体が標的にされる。
消費者や労働者、女性、少数派(人種、性的マイノリティなど)の権利のために公的に働く個人や団体が狙われることも多い。
これまでの例では、SLAPPを起こされた被告は合法的としか見えないような行為によって訴訟を起こされている。
例えば、請願のための署名を集めて回るとか、地元の新聞に記事を書く、あるいは投書をする。パブリックな集会で発言する。
違法行為を報道したり、通報したりする。合法的なデモに参加する、など。
例えば、請願のための署名を集めて回るとか、地元の新聞に記事を書く、あるいは投書をする。パブリックな集会で発言する。
違法行為を報道したり、通報したりする。合法的なデモに参加する、など。
プリング・キャナン教授の定義を元に、SALPPの条件を箇条書きにする。
① 刑事裁判に比べて裁判化が容易な民事訴訟。
② 公的問題が公の場所での論争になっている。
③ 訴訟の原告・被告はその公的論争の当事者である。
④ その公的問題について公的発言をした者(主に批判者や反対者)を標的に提訴される。
⑤ 提訴する側は、資金・組織・人材などの資源をより多く持つ比較強者。
⑥ 提訴される側はそれらの資源をより少なくしか持たない比較弱者。
⑦ 提訴によって、金銭的、経済的、肉体的、精神的負担といった裁判コストを被告に負わせ苦痛を与える。
⑧ こうした提訴による苦痛を与えることで、原告は被告の公的発言を妨害、抑止する。
⑨ 訴えられていない潜在的な公的発言者も、提訴を見て発言をためらうようになる。
⑩ 提訴した時点で批判者・反対者に苦痛を与えるという目的は達成されるので、提訴側は裁判の勝敗を重視しない。
② 公的問題が公の場所での論争になっている。
③ 訴訟の原告・被告はその公的論争の当事者である。
④ その公的問題について公的発言をした者(主に批判者や反対者)を標的に提訴される。
⑤ 提訴する側は、資金・組織・人材などの資源をより多く持つ比較強者。
⑥ 提訴される側はそれらの資源をより少なくしか持たない比較弱者。
⑦ 提訴によって、金銭的、経済的、肉体的、精神的負担といった裁判コストを被告に負わせ苦痛を与える。
⑧ こうした提訴による苦痛を与えることで、原告は被告の公的発言を妨害、抑止する。
⑨ 訴えられていない潜在的な公的発言者も、提訴を見て発言をためらうようになる。
⑩ 提訴した時点で批判者・反対者に苦痛を与えるという目的は達成されるので、提訴側は裁判の勝敗を重視しない。