赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(7)
戦後70年の歴史認識をめぐって(1)
「国策」の歴史認識に「真実」の照射を
戦後70年」を巡る日本の「歴史認識問題」に対する中国と韓国のプロパガンダがはじまりました。日本人に贖罪感を植え付け、国際社会での孤立化を図ろうとする意図によるものです。また、一部のマスコミがこの動きに連動し、「歴史の真実」が「捏造の歴史観」の中に押し込まれる危険性があります。
そこで、この歴史認識問題にどう対処すべきなのかを考えたいと思います。
中国や韓国の対日プロパガンダは「国策」です。彼らは国際社会を巻き込んだ情報戦で対日圧力をかけ、自国に有利な立場を築いていこうとしています。このような動きにどう対応してくのかということが重要になってきます。
日本としては戦後70年の節目を好機と捉え、問題の解決を図らねばならないと思います。正面から向き合って「正しいことは正しい、間違いは間違い」と認めることから、明日のよりよい国際社会を作れるのではないかと思います。
ただし、これはかつてのように妥協や迎合をせよということではありません。本気で日本の考えを表明していかねばなりません。それが理解されるかどうかは問題ではありません。「それぞれの立場が違うということを理解する」ことが、国際社会においての多様性を認めあうことであり、国際平和の基礎となるのです。違うことばかり言い合い、立場を認めない態度こそ紛争の火種となるからです。
歴史認識問題は冷静な対応と事実の表明を
さて、この歴史認識を巡る問題について、結論から先に申しますと、第一に、「対日プロパガンダには大騒ぎして反応はしない。あくまでも冷静な目で論点を見る」、第二に「歴史の真実を一切の脚色なく、ありのままに情報として発信する」、という二点に尽きると思います。冷静に対処して、真実の光を照射することで、捏造の闇は消えざるを得なくなるからです。
それではなぜ、中国や韓国は執拗なほどに歴史認識問題を持ち出してきているのか、その歴史的背景や裏に隠された意図を最初に知っておく必要があります。また、それに対して日本はどう反応し、どう対応してきたのかも確認していく必要もあります。ここを理解し、本質を見抜いた先に、問題解決の糸口がみつかるのではないでしょうか。
<中国の歴史認識とどう向き合うのか>
「反日政策」が効かなくなった!
中国による「反日路線」の始まりは、一般的に江沢民氏の日本に対する強烈な対抗意識に基づくものだといわれています。江沢民氏の日本敵視路線は、結果として中国をまとめるのに役立ったようで、その後も胡錦濤政権、現在の習近平政権下でも継続されています。しかし、これは「国策」としての反日で、民衆レベルまでの反日ではないといわれています。中国の人にとっては、その大多数が反日感情を抱いているわけではなく、中国共産党の号令のもとに行動しているにすぎないようです。現に、反日デモは、「中国政府への転覆活動に転化する可能性」が大きくなっていますので、行われなくなりました。すでに、反日というだけでは中国を統合する効果が薄れているようです。
恥辱の歴史に対する「中国の苦悩」
「中国の苦悩」は、単に、日本が中国大陸に進出した「満州事変」や「日支事変」にようものではないようです。中国出身の政治学者の汪錚 (ワン・ジョン)氏によると、中国人の歴史に対する悲しみは「勿忘国恥(国の受けた恥辱を忘れるな)」にあると指摘しています。19世紀なかば以降100年間にわたっての侵略、領土の割譲、賠償金の支払い、国権の喪失 (不平等条約)を強いられ、辱められてきたという 「歴史的記憶(※1)」に基づくもののようです。
(※1)1840年アヘン戦争:イギリス、香港島を割譲。1856年アロー戦争:イギリス、九龍を割譲、ロシアは外満州を割譲。1884年清仏戦争勃発:フランス、ベトナム全土を植民地化。1894年日清戦争:清、朝鮮の独立を承認、台湾と澎湖諸島が日本に割譲。
なお、当時の中国人の苦しみは、かつての日本人も共有していました。とくにアヘン戦争で清国が敗北したとの衝撃は幕末の日本にも伝えられ、維新の志士たちに西欧列強への大きな危機感を抱かせるものとなりました。
したがって、中国にとって恥辱を晴らしたいという思いは、本来的には日本だけに向けられるべきものではないのですが、中国は強い姿勢で臨んで来る国には反発ができない(※2)という精神的な弱さがあります。
※2 中国の国家主席胡錦濤氏が訪米時、ホワイトハウスの歓迎式典で国旗が逆さまに掲げられ、中華民国(台湾)の国歌が演奏されたが、胡錦濤氏は抗議もせす、ニコニコとしていたと伝えられている。
そのために、第二次世界大戦で敗戦国であり、しかも外交的な圧力に極めて弱い日本に対して、全ての「恨み」を集中してぶつけている可能性も高いと考えられます。しかも、日本の戦後の急速な経済的繁栄に対する強い嫉妬心も加わり「怒り」を増幅させていたのではないでしょうか。
覇権をめざす中国のもうひとつの狙い
また、中国にはアメリカの後継者としての地位を築きたいという野望があります。そのためには、まず、アメリカと太平洋の東西を二分化したいという意思をもっていました。アメリカに簡単に退けられましたが、それでも外洋進出を諦めているわけではありません。
中国が外洋に進出するには東シナ海から太平洋に出ざるを得ません。しかし、そこには日本が存在し、沖縄には最強の米軍が控えています。
沖縄は東アジアの主要都市に航空機で4時間以内で到達できる戦略的な要衝です。中国にとっても沖縄は喉から手が出るほど欲しい戦略地点でもあるのです。
沖縄を中国の意のままにするには、沖縄を日本から分離させること、そして米軍基地を沖縄から排除させることが必要になります。そのために、中国は日本に「軍国主義復活阻止」を叫び、集団的自衛権の行使をさせないように、しかも、日米同盟に亀裂が入るように工作活動をしています。沖縄の反米基地闘争はその一環です。
また、沖縄には、「琉球独立」という幻想をあたえて沖縄を日本から分断しようとしています。その工作のために、沖縄はかつては中国の支配下にあったのだという嘘の主張(※3)や、かつての沖縄戦の惨禍を日本のせいにして、中国の主張には抵抗しづらい心理環境を作ろうとしています。
※3 日本書紀に、「和銅8年(715年)正月、立太子礼をすませた首皇子(おびとのみこ、後の聖武天皇)の朝賀の儀が執り行われた際、大極殿の前には北は陸奥、出羽の蝦夷たちが25人、南は奄美大島をはじめ、屋久島、徳之島、そして、沖縄の石垣島や久米島から、それぞれの代表52名が参列した」と書かれている。
国策としての歴史戦にのぞむ中国
2月23日の国連安全保障理事会の討論会合(※4)で、中国の王毅外相は「(第2次大戦について)いまだに真実を認めたがらず、侵略の犯罪をごまかそうとする者がいる」と語っています。直接の名指しを避けていますが、これは日本を念頭に置いているのは明らかです。
※4 これに対して日本は、吉川元偉国連大使が「日本は戦後、大戦の深い反省に立ち、平和国家としての道を歩んできた」と強調した。その姿勢は「日本人の誇りであり、決して変わらない」とも言明した。菅義偉官房長官は2月24日の記者会見で「国益を懸けてしのぎを削る場面だ。日本として主張すべき点は、主張していく」と強調した。
また、5月には対ドイツ、9月には対日戦勝記念日に合わせ、習近平国家主席とプーチン大統領が、モスクワと北京を相互訪問することになっています。9月の式典については、共産党の機関紙『人民日報』で「パレードで中国の軍事力を示し、日本を震え上がらせる」と報じています。また12月13日を南京事件の「国家哀悼日」として、大規模な反日キャンペーンを展開する予定のようです。
今年の春から1年間は、歴史認識問題の言及が吹き荒れそうです。すでに、NHKのニュース番組の中でも歪んだ見解が出始めているようです。中国や韓国が声高に主張を展開し始めると、一部の新聞、歴史学者、政治家が便乗して、積極的に彼らをバックアップすると思われます。この影響で、真実の声はかき消されがちになり、国内では悲観論が漂い始めるかもしれません。
その時、私たちは、冷静に一つ一つの歴史的真実を伝えていくべきです。歴史的事実を検証したとき、必ずしも日本が全て正しいわけではないはずです。評価すべきは評価し、反省すべきは素直に反省しながら、「真実の歴史」に向き合わねばなりません。
遠回りかも知れませんが、それが問題を解決する王道であろうと思います。
(つづく)
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