http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130809/dms1308091158013-n1.htmより転載
【五島列島ルポ】衰退する漁業…中国漁船の乱獲で追い打ち 「状況は尖閣と同じ」嘆く漁業者 (1/3ページ)
【五島列島ルポ】衰退する漁業…中国漁船の乱獲で追い打ち 「状況は尖閣と同じ」嘆く漁業者 (1/3ページ)
2013.08.09
玉之浦湾に緊急避難してきた中国の虎網漁船。その威圧感に島民はおののいた=昨年8月、長崎県五島市【拡大】
中国の虎網漁船やかぶせ網漁船などによる乱獲が深刻化する東シナ海。
中国の虎網漁船やかぶせ網漁船などによる乱獲が深刻化する東シナ海。
その被害をもっとも受けているのが九州本土最西端に位置する五島列島だ。長年の漁業不振で漁業者が減り続ける中、中国漁船の乱獲により漁業も街も寂れるばかり。「日本の海」を守ってきた離島の漁業者たちの嘆きに胸が痛んだ。
アジ、サバ、イワシなど遠洋巻き網漁業の基地である五島列島・奈良尾港(長崎県新上五島町)。夏休み中にもかかわらず観光客の姿はほとんどなく、港近くの「あこう通り商店街」は閑散としていた。
「昔は『巻き網漁船に3、4年乗れば家が建つ』と言われるほど繁盛していたんですよ。今は若い人も『陸(おか)の仕事の方がよっぽど収入がいい』と言って漁師をやめてしまった。すっかり廃れてしまい、寂しい限りです…」
奈良尾港を拠点に遠洋巻き網漁業を行う「まるの漁業」の野村俊郎社長(63)はこう嘆いた。
奈良尾港に来訪したのは、「月夜間(つきよま)」と呼ばれる毎月6日間ほどの休漁期間だった。かつては岸壁に巻き網漁船がひしめき合っていたというが、停泊していたのはまるの漁業の第28野村丸など数隻のみ。
それもそのはず。巻き網漁最盛期の昭和50年代、水産会社12社が五島列島に拠点を置き、25船団125隻が奈良尾、浜串両港を母港としていた。今は4社6船団30隻。両港界隈(旧奈良尾町)には5千人が暮らし、商店街も活気にあふれていたという。
だが、現在の人口は半分以下。しかも高齢化率は41.4%と全国平均(23.3%)をはるかに上回る。
地域医療拠点だった奈良尾病院は平成23年4月、医師不足のため入院できない無床診療所となった。
× × ×
港が寂れた理由は一つ。漁業がすさまじい勢いで衰退しているからだ。
昭和52年の両港の水揚げは21万7千トン(249億円)に上ったが、平成23年は5万3千トン(73億5千万円)と3割に満たない。
輸入増によりサバなどの魚価が下落した上、地球温暖化により漁獲量が減り続けている影響が大きいが、これに追い打ちをかけたのが、中国漁船による乱獲だ。
特にここ3、4年は日中両国の排他的経済水域(EEZ)が重なり合う日中中間水域で中国漁船が急増している。五島列島の西約120キロにあるこの海域は、サバやアジの良好な漁場だったが、昨年だけで280隻以上の中国漁船が確認された。
中でも悪質なのは虎網漁だ。日本の巻き網漁漁船よりはるかに大きい400~500トンの漁船が強力な集魚灯と全長1キロもある長大な網で魚群を一網打尽にする荒っぽい漁法であり、漁場は荒らされ放題。日本漁船が見つけた魚群を横取りすることも日常茶飯事で、最近は巨大なアームに付けた網で魚群をかっさらう「かぶせ網漁」も急増している。
古くなった網を切断し不法投棄するケースも増加している。ここ数年、日本漁船のスクリューに浮遊する網がからまり、身動きできなくなる被害も相次ぐ。
だが、EEZと違って中間水域では、水産庁の漁業取締船が取り締まることはできない。中間水域での日本漁船の操業は、虎網漁船の出現により、ますます減ってしまった。
長崎県平戸市・生月島を拠点とする東洋漁業の徳永幸廣常務は悔しそうにこう打ち明けた。
「中国漁船のやり方では東シナ海がどんどん枯れてていく。燃料代も高騰しているので、中国漁船がやりたい放題の中間水域までわざわざ漁に出るのは割に合わないのが現状です。本来はよい漁場なんですが…」
× × ×
五島列島の漁業者の大半は、近海での刺し網漁やはえ縄漁を営んでおり、沖合で中国漁船を目にする機会は滅多にない。
ところが、昨年7月18日未明、東シナ海への台風接近を受け、操業中の虎網漁船106隻が玉之浦湾(五島市福江島)に避難してきた。
事前連絡の上での緊急避難は合法であり、上陸しない限り問題はないが、過去には湾内に設置したハマチなどの養殖筏(いかだ)や定置網に中国漁船の錨(いかり)が引っかかる被害が出たり、船員が勝手に不法上陸して警察が捜索する騒ぎもあった。
昨年はこのようなトラブルはなかったが、106隻はいずれも日本の巻き網漁船よりはるかに大きかった。かつて中国漁船は50トンほどのオンボロ船ばかりだっただけに島民たちは恐怖におののいた。
その後も中国漁船の来襲は続き、8月24日にも89隻が大挙して押し寄せた。
昨年中の緊急避難は計4回、延べ268隻に上る。
避難先の入り江から2~3キロ離れた湾内には日本漁船が停泊する漁港がある。五島漁協玉之浦支所の山下真澄支所長はこう語った。
「もし間違ってこっちの漁港に入ってこられたら被害はもっと大きい。五島は昔からずっとこういう思いをしているんです」
× × ×
平成23年11月、沿岸漁業者のテリトリーである五島列島沖の領海内で、海上保安庁巡視船が、停船命令に従わずに逃走した中国中型漁船の船長を漁業法違反容疑で逮捕した。
尖閣諸島をめぐり日中間の緊張が続く中、海上保安庁の活動も尖閣周辺に集中している。
当然、五島列島沖は手薄となっており、これに乗じて中国漁船が急増しているとみられる。
代わりに海の監視役を担ってきたのが日本漁船だが、国による補償はなく、乱暴な中国漁船とトラブルになり、船が損傷しても泣き寝入りするしかない。まるの漁業の谷綾一取締役総務部長はこう語った。
「商売上、損をしてまで中間水域には行けない。ますます監視が手薄になり、相手は横暴になるという悪循環です。こういった問題が積み重なり、行き着いた先が尖閣諸島なんでしょうが、五島も同じような状況にあるんです」
平成24年に改正された離島振興法では、対象となる離島を「わが国の領域、排他的経済水域の保全、海洋資源の利用(中略)などわが国の利益に重要な役割を担っている」と定めている。第28野村丸の吉本洋一郎漁労長(66)は自船を見上げながら嘆いた。
「魚価は下がり続けているのに円安政策で燃料代は上がる一方です。漁師はみんな大変なんだが、国からの支援はあまりにも少ない。領海を守る力になりたいとは思うけど、国は農業に比べて漁業にあまりに冷たいんじゃないかな…」(田中一世)
転載終わり
尖閣を守るということは、あくまで、日本の領土、領海、領空を守るということの代名詞に過ぎない。
尖閣に、資源を集中投下するあまり、五島のように、守れない事態が、発生している。
ならば、早急に、手を打つべきだろう。
いまのところ、ここの守りを、尖閣のために手薄になる以前の状態まで戻すことには、
別に、憲法改正も、憲法解釈の変更も必要はない。
予算をつけて、人員を増員をするだけのことだ。
必ずしも、守るというのは、軍事力を否定して、存在し得ないけれど、
だからといって、軍事力だけの問題ではない。
なぜ、政治は、できることから、さっさと手をつけないのだろうか?
広範囲わたる防衛について、小さなことから積み重ねていく姿勢を、持つべきだろう。
いわゆる、周辺国を刺激するな、という方々が、守ろうとする周辺国の存在によって、
日本の資源が、強奪され、枯渇するかもしれないときに、国家として、ただ指をくわえてみているだけなのは、
無能すぎる。
この漁業の姿勢一つ見ても、中国の勢力が拡大していくことは、
この地球を食い荒らすことでしかない、のが見てとれる。
すべての国にとって、中国は危険な国であるということであり、
この国を、押しとどめる力を、周辺国が持たない限り、
地球人として、不幸を避けることはできない。