「東京裁判を正しく読む」ための予備知識
東京裁判についての綿密な研究において高い評価がなされているご両人の対談であるが、GHQによる戦後改
革(憲法改正・財閥解体・農地改革・教育基本法など)の一環としての東京裁判の位置づけという視点が欠落し
ているのではないか。ポツダム宣言における日本の「民主化」にとって、東京裁判の意義の大きさは、ご両人とも
自覚はあるはずである。
つまりGHQ主導の戦後日本の民主主義国家への国家改造にとって、歴史認識の変革と軍国主義者の処罰の
プロセスは、不可欠のものであったのだ。東京裁判判決における歴史認識の原型は、昭和20年12月8日~17
日の全国紙に強制的に掲載された「太平洋戦争史ー満州事変(奉天事件)から無条件降伏までー」であるが、こ
れは、GHQ草案の現行「日本国憲法」と表裏一体のものであった。つまり、太平洋戦争の歴史的総括なしに「日
本国憲法」は成立しえないという大きな枠組みの議論がどうしても不可欠なことなのである。
したがって太平洋戦争の歴史的総括のあり方如何が、護憲派・改憲派の問題と深く結びついているということに
なる。歴史観と憲法観とは表裏一体のものであるという認識の下に、東京裁判を議論することこそが、今日にお
いて重要なのではないか。なぜなら、憲法改正問題は、待ったなしの政治課題になりつつあるからである。
したがってこの『東京裁判を正しく読む』は、『「東京裁判を正しく読む」ための予備知識』ということになるのでは
ないか。