「真実に生きられる社会に」 陛下、水俣で異例のお言葉
2013年10月28日08時05分
【島康彦】熊本県を訪問中の天皇、皇后両陛下は27日、水俣市を初めて訪れ、水俣病患者たちと懇談した。患者の多くが差別を恐れて病気を隠してきた実態を聞いた天皇陛下は、「真実に生きることができる社会をみんなで作っていきたいと改めて思いました」と、約1分間にわたって思いを語った。
発言は予定外。事前に「お言葉」が用意された行事以外で、天皇陛下がこのように時間をかけて思いを口にするのは異例だ。
天皇陛下が自らの思いを語ったのは、患者で「語り部の会」会長の緒方正実さん(55)の体験を市立水俣病資料館で聞いた直後。38歳まで水俣病の認定申請を避けてきたという緒方さんに対して、天皇陛下は患者一人ひとりを見渡すようにして、「本当にお気持ち、察するに余りあると思っています」「様々な思いを込めて、この年まで過ごしていらしたことに深く思いを致しています」「今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています」とゆっくりと語りかけた。
石牟礼さん、両陛下見送り 水俣病胎児性患者と面会叶う
2013年10月28日21時56分
【河原一郎】熊本県を28日まで訪れていた天皇、皇后両陛下を熊本空港で見送る人々の中に、熊本市在住の作家・石牟礼道子さん(86)がいた。今回の訪問前、水俣病の胎児性患者に会って欲しいと書いた手紙を宮内庁に送っていた。患者らと面会した両陛下をひと目見送りたいと、入院中の病院から駆けつけた。
ロビーで両陛下を待つ人たちの最前列にいたという石牟礼さん。一人ひとりに視線を配り、歩く皇后さまと目が合ったと思い、車いすから立ち上がると、皇后さまも少し歩みを緩めたように見えた。見送り後、侍従を名乗る男性が近寄って来て、皇后さまからの伝言として、「くれぐれもお体を大切に」との言葉と見送りのお礼を伝えたという。
石牟礼さんは7月末、東京であった会合で隣になった皇后さまに「水俣に行きますからね」と伝えられ、その後、宮内庁に手紙を送った。「今も認定されない潜在患者の方々は苦しんでいます。50歳を超えてもあどけない顔の胎児性患者に会ってやって下さいませ」
石牟礼さんは28日、取材に「まなざしのやりとりで、たくさんのことを読み取り、通じました。天皇陛下も横におられ、同じように笑顔でした」と話した。
両陛下が水俣を初訪問、認定患者らと懇談
天皇、皇后両陛下は27日、熊本県水俣市を初めて訪問し、水俣湾の埋め立て地に立つ「水俣病慰霊の碑」に白菊の花を供えた後、語り部の認定患者らと懇談された。懇談では「真実に生きることができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました」などと、1分近くに及ぶ異例の長いお言葉を述べられた。
両陛下は、碑のそばにある水俣病資料館で、患者ら10人と約20分間、懇談された。語り部の会会長の緒方正実さん(55)が公害の歴史や症状について説明。これを受けて、天皇陛下が返礼された。宮内庁関係者によると、お言葉は準備されたものではなかったという。
両陛下は、第33回全国豊かな海づくり大会のため熊本入りされ、同市での放流行事に合わせて懇談が組まれた。
(2013年10月28日読売新聞)
![](http://kyushu.yomiuri.co.jp/g/d.gif)
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両陛下、慰霊碑に供花=水俣病患者と懇談-熊本
第33回全国豊かな海づくり大会出席などのため熊本県を訪問中の天皇、皇后両陛下は27日、水俣市を初めて訪問し、水俣病慰霊の碑に供花、患者や遺族と懇談された。
慰霊碑は水俣病公式確認から50年目に当たる2006年に建立され、認定患者のうち遺族から申し込みのあった犠牲者375人の名簿が奉納されている。両陛下は慰霊碑に花束を供えると、深々と一礼した。
水俣病資料館では写真などの展示を見学した後、「語り部の会」会長の緒方正実さん(55)から患者と認定されるまでの苦労話を聞いた。天皇陛下は聞き終わると「お気持ち、察するに余りあると思います。本当にさまざまな思いを込めてこの年まで過ごしていらしたということに深く思いを致します」などと、異例の長い感想を述べた。
その後、両陛下は患者や遺族と懇談し、「どうぞ元気でね」「くれぐれもお大事に」と一人ひとりに声を掛けた。
緒方さんは懇談後、「生きていて良かった。いろいろな苦しみを経験したが、苦しみだけではなかったと実感した」と話した。(2013/10/27-20:02)
慰霊碑は水俣病公式確認から50年目に当たる2006年に建立され、認定患者のうち遺族から申し込みのあった犠牲者375人の名簿が奉納されている。両陛下は慰霊碑に花束を供えると、深々と一礼した。
水俣病資料館では写真などの展示を見学した後、「語り部の会」会長の緒方正実さん(55)から患者と認定されるまでの苦労話を聞いた。天皇陛下は聞き終わると「お気持ち、察するに余りあると思います。本当にさまざまな思いを込めてこの年まで過ごしていらしたということに深く思いを致します」などと、異例の長い感想を述べた。
その後、両陛下は患者や遺族と懇談し、「どうぞ元気でね」「くれぐれもお大事に」と一人ひとりに声を掛けた。
緒方さんは懇談後、「生きていて良かった。いろいろな苦しみを経験したが、苦しみだけではなかったと実感した」と話した。(2013/10/27-20:02)