カドミウム(Cd)を内臓に多く含むウミガメは小さい
汚染地を外した調査で基準検討 カドミウム厚労省審議会
2010年3月17日
有害重金属カドミウムについて、畑作物の安全基準を設けるかどうか検討していた厚生労働省の審議会に、汚染地を除いた調査が、国内の畑作物の実態として報告されていたことがわかった。審議会は、この調査をもとに日本人のカドミウム摂取量を「十分低い」と判断し、基準づくりの先送りを決めた根拠の一つとしていた。
国内でカドミウムの安全基準があり対策が取られているのはコメだけで、コメ以外の畑作物は汚染地で生産されたとしても規制されない。厚労省は畑作物の安全基準を設けるかどうか再検討することを決めている。
この調査は、農林水産省が1996~2002年に行った「農作物等に含まれるカドミウムの実態調査」。47都道府県を対象に、畑から直接採取したり、収穫後の作物から抜き取ったりする「現地調査」と、市場流通する作物を買い上げる「市場調査」の2種類だった。現地調査で計2208点、市場調査で計2822点の作物中のカドミウム濃度を分析した。
農水省によると、同省は現地調査の場所について「重金属による汚染農用地は対象としない」と都道府県に指示した。国内の安全基準(1.0ppm)以上の濃度のコメが生産され、農用地土壌汚染防止法(土染法)で汚染田に指定された地域内での転作や二毛作などによる作物を除外するよう求めた。市場調査では、採取場所を特定できていないという。
調査の結果、国際規格の安全基準を上回った作物は対象の4.4%で、土壌の最高濃度は0.8ppmだった。汚染地を除いた理由について同省は「高濃度作物ばかり集めると偏ったデータになると判断した」と説明している。
厚労省は03年、この農水省調査結果をもとに、食品からの日本人のカドミウム摂取量を試算した。08~09年にあった厚生労働相の諮問機関「薬事・食品衛生審議会」の部会に、調査結果とともに報告された。同部会は、ほかの調査結果も含めて検討し、「日本人の摂取量は健康被害を及ぼす恐れを十分下回っている」と判断、基準づくりの先送りを決めた。部会には、農水省調査に汚染地が含まれていないことの説明はなかった。
畑作物のカドミウム汚染については、環境省の「畑作物等指定要件検討基礎調査」で、汚染地を含む一部地域の作物から高濃度のカドミウムが検出され、同審議会に報告されていなかったことが明らかになっている。この調査では13%が国際基準を超え、土壌の最高濃度は6.94ppmだった。
調査に協力した25道府県のうち、基準を超えたカドミウムが検出されたのは9自治体(都道府県単位)で、その大半が朝日新聞の取材に対し、カドミウムを排出した旧鉱山や製錬工場近くを含む畑から採取したと回答。7自治体が「農水省の調査では提供していない地点から採取した」とし、2自治体は「不明」と答えた。