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[転載]ハンムラビ法典(あとがき「強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦とに授けられるように」)

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 ハンムラビ法典(ハンムラビほうてん、Code of Hammurabi)は、バビロニアの王ハンムラビ(ハムラビ)が発布した法典。アッカド語が使用され、楔形文字で記されている。
 
ハンムラビ法典の文面楔形文字で記録されている
 
概要
 
 
 紀元前1770年ごろ,バビロニアのハンムラビ王がつくった 法典 。世界 最古の 法律 の1つ。高さ225cmの石柱に,くさび形文字で 刻 んでいる。282 条 からなり, 刑罰 ・土地所有・ 財産相続などについてくわしく 規定している 。

 「目には目を,歯には歯を」という 規定や,身分によって 刑 をかえる 規定 がある。

 ハンムラビ 法典 のおもな 内容

1.人を 死刑にあたいするとして 訴え, 立証 できなければ, 死刑 にされる。

128. 妻を 得ても,かの女のために 契約書をつくらなければ,その女は 妻ではない。

195.父を打った子は,指を切られる。

196.自由人の目をつぶしたものは,その目をつぶされる。
 
 
 ハンムラビ法典は完全なかたちでのこる世界で2番目にふるい法典である(現存する世界最古の法典はウル・ナンム法典)。
 
 「前書き・本文・後書き」の3部構成となっている。本文は慣習法を成文化した282条からなり、13条及び66-99条が失われている。前書きにはハンムラビの業績が述べられており、後書きにはハンムラビの願いが記されている。
 これはあとになって石柱に書き写され、バビロンマルドゥク神殿に置かれた。以後の楔形文字の基本となった。
 1901年、閃緑岩に刻まれたものがイランスサで発見された。現在はパリルーヴル美術館が所蔵し、レプリカ三鷹市の中近東文化センターや岡山市北区岡山市立オリエント美術館でみることができる。
 モーセの律法書のもとになったとみなす学者もいるが、内容的に大きく異なる。
 
 アッシリア学研究者ジャン・ボテロの見解では、ハンムラビ法典はバビロニア王ハンムラビの所信表明の意味合いが強いと主張している。根拠は、法典内容と、実際にバビロニアから発掘された粘土板による記録を精査すると、かならずしも法典内容と実際の判決が一致していないことによる。
 このことから、ハンムラビ法典の内容そのものはハンムラビ王が即位する前後に王としてどのような法改正を行うかを表明したもので、「実際の法改正・司法制度の制定、運用にあたっては法典内容よりも訂正が加えられた」とする意見もある。
 
 
 
ハンムラビ法典が記録された石棒ルーブル美術館
 
 
 
「目には目を、歯には歯を(タリオの法)」
 「目には目を、歯には歯を」との記述は、ハンムラビ法典196・197条にあるとされる(旧約聖書新約聖書の各福音書にも同様の記述がある)。195条に子がその父を打ったときは、その手を切られる、205条に奴隷が自由民の頬をなぐれば耳を切り取られるといった条項もあり、「目には目を」が成立するのはあくまで対等な身分同士の者だけであった。
 ハンムラビ法典の趣旨は犯罪に対して厳罰を加えることを主目的にしてはいない。古代バビロニアは多民族国家であり、当時の世界で最も進んだ文明国家だった。多様な人種が混在する社会を維持するにあたって司法制度は必要不可欠のものであり、基本的に、「何が犯罪行為であるかを明らかにして、その行為に対して刑罰を加える」のは現代の司法制度と同様で、刑罰の軽重を理由として一概に悪法と決めつけることはできない。ハンムラビ法典の内容を精査すると奴隷階級であっても一定の権利を認め、条件によっては奴隷解放を認める条文が存在し、女性の権利(女性の側から離婚する権利や夫と死別した寡婦を擁護する条文)が含まれている。
 後世のセム系民族の慣習では女性の権利はかなり制限されるのでかなり異例だが、これは女性の地位が高かったシュメール文明の影響との意見がある。
 
 
ハンムラビ法典
 

ハンムラビ法典と律法

 ハンムラビ法典の「目には目」と旧約聖書出エジプト記21章、レビ記24章、申命記19章における「目には目」の律法が似ているため、その関係がよく取り上げられるが、その詳細は異なる。
 ハンムラビ法典は上述のように、身分の違いによってその刑罰が異なるのに対し、聖書律法は身分の違いによる刑罰の軽重はない。また、聖書の律法は、神と家族間に対する罪など、倫理的な罪はそれと比べて重い処罰が課せられ、物品等の損害など商業的罪に関してはそれと比べ軽い罪が課せられている(Gordon Wenham) 。

現代における評価

罪刑法定主義

 現代では、「やられたらやりかえせ」の意味で使われたり、復讐を認める野蛮な規定の典型と解されたりすることが一般的であるが、「倍返しのような過剰な報復を禁じ、同等の懲罰にとどめて報復合戦の拡大を防ぐ」すなわち、あらかじめ犯罪に対応する刑罰の限界を定めること(罪刑法定主義)がこの条文の本来の趣旨であり、刑法学においても近代刑法への歴史的に重要な規定とされている。

公平性

 現代人の倫理観や常識をそのまま当てはめることはできないが、結果的にこれらの条文は男女平等人権擁護と同類の指向を持つ条文である。
 また、犯罪被害者や遺族に対して、加害者側に賠償を命じる条文や、加害者が知れない場合に公金をもって損害を補償する条文も存在し、かつ被害の軽重に応じて賠償額(通貨の存在しない物々交換の時代なので、を何シェケルという単位だが)まで定めてある。「ハンムラビ法典は太陽神シャマシュからハンムラビ王に授けられた」というかたちで伝えられるが、特定の宗教的主観に偏った内容ではなく、むしろ宗教色は薄い。
 
 身分階級の違いによって刑罰に差がある点は公平といえないが、当時の社会情勢に鑑みると奴隷制廃止は不可能であり、何らかのかたちで秩序を定める必要があったことから当然の帰結といえる。ただし、身分差別を除いて、人種差別、宗教差別をした条文はみられない。この点に関しては中世ヨーロッパ宗教裁判に比してはるかに公平と公正さにおいて優れており、先進的といえる。司法の歴史上非常に価値の高いものである。

弱者救済

 あとがきに、「強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦とに授けられるように」の文言がある。社会正義を守り弱者救済するのが法の原点であることを世界で2番目にふるい法典が語っていることは現代においても注目される。

等価の概念

 経済学者のカール・ポランニーは、ハンムラビ法典の負債取り消しに関する記述や、報酬にかかる費用などを研究し、当時の社会での等価は市場メカニズムではなく慣習または法によって決められていたと論じた。近代的な等価概念との相違点として、私益のための利用を含まないこと、および等価を維持する公正さをあげる。

 
 紀元前18世紀中ごろにハムラビ王が制定した、楔形{くさびがた}文字法典。「目には目を、歯には歯を」の同態復讐{ふくしゆう}法で名高い。1901~02年に西イランのスーサで発見された石碑(ルーブル美術館蔵)には、神(おそらく太陽と正義の神シャマシュ)から権力の印を受ける王の浮彫りと、楔形文字による法典とが刻まれている。
 
 序文、本文、結びの三部からなる法典の構成は、ウルナンム法典など古い時代の伝統を継承している。神々を敬う心に篤{あつ}い王の人格を強調する序文に続く本文は、「人々に正義を与えるために」編まれた282条の法律を含み、この法律を遵守するよう子孫に諭すのが結びである。
 楔形文字法典中もっとも整った内容をもつこの法典は、まず最初に裁判の公正を期す基本線を定め、不正を働く裁判官を厳しく否定したあと、神殿や王宮の所有物に対する窃盗を取り上げる。
 
 ついで条文は、出征中あるいは捕囚の身の兵士の土地の耕作権、小作、借金と債務奴隷制度、婚姻と家族、各種労働者や労働用具の雇用などのテーマに関し、具体例を想定しつつ、判定の基準を示していく。
 選ばれたテーマそのものが、土地所有と農業に立脚する当時の社会を反映するが、とりわけ土地を支給されるかわりに賦役義務を負う直接生産者の生活基盤の、したがって彼らに依存する王権の存立基盤の維持・強化こそ制定者の意図と読み取ることができる。
 いわゆる同態復讐法もこの法典に特徴的であるが、同一犯罪に対する処罰は被害者の社会的身分(自由人、ムシュケーヌムとよばれる人々、奴隷)により異なり、しかも現実に同態復讐が実行された確証はなく、通常は示談に付されたらしい。
 制定時期は王の晩年であるが、判決記録などに照らすと、法典の法律は実地に適用されたものではなく、むしろ慣習法を基に「犯罪」を裁く理念をまとめたものと考えられる。



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転載元: 環境法・刑法・民法研究会


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